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いけばな随想
diary

花の不都合 251008

2025/10/9

 産直市に並ぶ花は、売る専門家ではない生産者が持って来る。売る専門家の花店には、綺麗に手入れされた“よそゆき顏”の花が並ぶ。全国の生産者から東京や大阪の花市場に行き、再びUターンしたり、Jターン、Ⅰターンした花が全国の花店で売られる。
 もちろん地元産の花が地元の花市場を経て、地元の花店に並ぶことも珍しくはないが、聞く限りではその割合がどんどん減っている。愛媛を代表するサクラヒメ(桜色のデルフィニウム)も、春先のものは愛媛産でも秋口のものは北海道産が多い。
 そういう流通が普通になると、地方の生産者は安く買い叩かれても、まとまった量が動く大きい市場に出荷する。そして地元の消費者は、遠く旅してやって来た綺麗で高価な花を買う。「このバラ高いよう!」と訴えると、ケニアやインドから取り寄せるバラはどうか? と、売る方も買う方も渋々折り合いを付けたりするのだ。
 地産地消とか、地方の時代とか、政府は何十年も飽きることなく言ってきたが、日本全体が世界の地方になりつつある現在、いけばなの分野ですら非伝統的な土俵で相撲をとるようになった。

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