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いけばな随想
diary

「ない」と「あった」 250824

2025/8/26

 幽霊には足がない。着物の裾に向かって描線が消えていくので、足はあったのかなかったのか想像しにくいが、多分はじめからなかったのではなく、あった足がなくなったのだと思う。
 いけばなで枝ぶりを整えていく作業は、不用な小枝を切り落とすことで、残した枝を強調する目的がある。そして、その切り落とし方で、いけばなの印象が大きく変わるくらいだ。
 ここに1本の桜の枝があるとする。根元に近い方から枝先に向けて、Y字の形だ。Y字の枝分かれ部分で太い方の枝を残し、細い方を切り落とすとする。そのとき、枝の根元からスッパリ切り落とすか、それともY字の残像を残すように根元を3cm切り残すか、それによって印象が大きく異なる。スッパリ切り落とした場合、その箇所に枝があったと想像させる印しが見当たらないから、切った枝は初めからなかったような印象になる。3cm切り残した場合は、切り残した枝の先に伸びた枝があったという気配が残る。
 つまり、「そこに枝はない」という意図で切るか、「そこに枝はあった」と見せるのか、制作者の意識が1点に凝縮される重要部位なのだ。

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