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いけばな随想
diary

アイディアは手から 250630

2025/6/30

 うんうん唸っていても、いけばなのアイディアは生まれてこない。だから、私はたいてい初めにスケッチを描く。それは殴り描きで、紙の上に雑な線や丸があるだけのものだ。そういうのを何枚も描いているうちにインスピレーションがやってきて、少しずつまとまりのある形が現れてくる。
 この段階が数日間から数週間続く。「一旦忘れる」ことを何度か繰り返すと、不意に「いいこと」を思い付いたりしながら、イメージがより明瞭になってくる。それでもまだ決め切ることはできない。所詮、頭で考えただけのものであり、頭の手先として手指が動いたに過ぎない。
 次の段階は花木の実物での手遊びだ。枯れものはいつも手元にあるので、そういう物も引っ張り出してくる。手で硬さや重さを確かめるように手遊びしていると、スケッチの段階ではわからなかったことや、可能なこと不可能なことなども見えてくる。こんな面倒な手間を掛けるのは、いけばな展の時だけだけれど、ふだんのいけばなでも、花材を見ただけで思い浮かぶイメージに比べて、花材を触りながら思い浮かぶイメージには大きな飛躍がある。

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