切るアート 250306
2025/3/6
苦し紛れというか、軽薄な思い付きというか、写真といけばなは「切るアート」だということに共通点がある。
シャッターは切るものであって、押さえるものでも押すものでもない。この機械式カメラの感覚は、デジタルカメラの出現でかなり減退させられて、スマホの出現で失われた。フィルムカメラは、機械的なシャッターの開閉時間の調節機構と、絞りの羽の開閉具合による光量の調節機構とで光を切り取る。
これはもう一瞬の決断と動作で行われるところに価値がある。つまり、デジカメだと連続的に撮影しておいて後でのんびりと取捨選択できるが、フィルムの場合は捨てる画像のフィルムはすべてコストとして消費されるため、とりあえず撮っておこうという選択肢はないのだった。
いけばなも同じである。「とりあえずこの枝を切っておこう」という選択肢は、ない。切ってしまえば、ひとまず確定である。ただ、写真と違うとすれば、いけばなは切ったら切ったなりに足すこともできることだろう。しかし、経験上いけばなには順序がある。足してから切る方が、引いたり足したりするよりも切れがいい。