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いけばな随想
diary

嘘と本当 250608

2025/6/10

 最近は外来の花の流通が種類も量も多く、本物と呼ぶしかないプリザーブド・フラワーの普及などもあって、生の本物なのに造花のように見える花がある一方、造花なのに本物に見える物もあって、偽物と本物の境界がどんどん曖昧になっている。
 しかし、造花を偽物と言い切ってしまうのもどうかという気持ちがある。切り花だって野にあるがままではないと言われれば、自然ではなく不自然な状態であることは否めない。それを100%本物と言えるのか。日本語で議論する限り、言葉を使う人によってニュアンスが異なって、立場が交わらず離れていくばかりだ。
 外来語を使うと、いけばなはフィクションである。フィクションは「嘘と本当」や「偽物と本物」を超えて、「つくり物」であり「物語」である。材料に何を使おうが、出来上がったいけばなはつくり物だ。どこかに嘘つきの性格を持っているし、確実につくり物の要素を持っている。
 だから、物語でもあるいけばなの「嘘と本当」は、材料によって区分されるのではなく、いけばな作家のいける態度や思想や心情によって分かれると考える方が馴染む。

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