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いけばな随想
diary

壺の贅沢 250524

2025/5/24

 花瓶という呼び方が素人臭くて、花器という呼び方をする。しかし、聞き慣れない人にとって「kaki」という発音からは花瓶をイメージできない。花瓶には生活臭があり、花器には生活臭がない。人は生活感が強い物にオシャレを感じにくいのだ。
 高級な旅館には、壺が飾ってある。あれを花瓶と呼んでしまうと価値が下がるかもしれないので、やはり壺と呼んでおきたい。高級な壺は、花を挿してなくても飾りとして成り立っている。花瓶に花がないのは少し頼りない。
 いけばなには剣山を使う水盤と呼ぶ花器もあるが、なぜか水盤を飾っている場所はない。花をいけていない水盤は、サマにならない。絵皿を立てて飾っているのは、絵を見てもらいたいからで皿を見せたいのではない。花器の水盤にも絵を描いておけばいいじゃないかと思ったが、そんなものをつくる作家がいない。
 いろいろ考えた挙句、言いたいことがまとまってきた。生活感のない花器はその機能性に着目した呼び方なので、花がないと機能しない。生活感のある花瓶には高級感が足りない。壺にこそ、花がなくても飾っておける贅沢がある。

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