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いけばな随想
diary

大事にするところ

2025/6/20

 いけばなをやる人が大事にするところは、それぞれ違う。私が大事にするのは、花材を俳優に見立てるところ。それは、若い頃に少し芝居を齧ったことがあるからだろうと思う。せっかく起用する俳優を、エキストラのように群衆化できない気質なのだ。1人1人にセリフがあって、1人1人にスポットライトを当ててあげたい。
 これは私が好きなジャズのセッションも同じで、メンバーそれぞれが(遠慮し合いながら)、結局は全開で自分のソロパートを演り切るみたいな。だから、交響楽団のような華麗で分厚いハーモニーを奏でる花はちょっと苦手だ。テレビのバラエティ番組のスタジオでキャスターの後ろにあるような、あでやかな盛りだくさんの花も少し苦手だ。
 人によって配色を大事にしたり、マッス(塊)の造形性を大事にしたり、1本の枝や草の線を大事にしたり、他人が大事にしているところがだんだん分かってくる。個々に違うからこそ、いけばな展として一堂に会したとき、1つ1つの作品が同調し合ったり反発し合ったりして愉しい空間が生まれるのだと思う。弟子も師匠に同調する必要はない。

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