汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

床の間の花 250121

2025/1/21

 ホテルの夜は暗い。諸外国のホテルと日本の一般的なビジネスホテルとの違いは、部屋も廊下もエレベーターホールも暗いことだ。照明は間接的なものが多く、照度も低いため、屋内空間の至る所に暗い陰がある。スリランカの英国統治時代のホテルのバーは極端に暗く、バーテンダーの顏さえよく見えなかった。「何でこんなに暗いの?」と聞くと、「夜だから」。
 第二次世界大戦後、日本の家は明るくなったと言われる。明るい居宅が平和と幸せの象徴となった。そして、屋内には薄暗い片隅のない、のっぺらぼうの家が建てられた。無意味な空間、機能的でない空間が余っているからこそ、花をいける余地もあったというのに。
 伝統的な日本家屋には、床の間が神棚や仏壇と共にある。神棚や仏壇は、神様仏様に祈り敬う空間として一定の機能性があるが、床の間は、昔は殿様や家長が座る家の中心だったものの現在は機能性の低い象徴的な空間になっている。使われない飾り棚とでもいうところ。
 そんな床の間に、家長の代わりに主役で花に座ってもらうと、姿が見えなくても家じゅうの背筋が伸びるようである。

講師紹介