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いけばな随想
diary

思い込み 250406

2025/4/6

 いけばなをするとき、私がいちばん大事にしているのは「疎密」である。背景と作品の関係もやはり疎密の関係だ。この構え方は、主題(表現したいこと)に対してとてもこだわりのある手法であり、私はそれを当然あるべき表現のしかただと信じてきた。
 しかし、人は歳を取り経験を積むほどに思い込みが激しくなる。その危険性を自分も感じるから、意識的にニュートラルな立場に身を置こうとは考える。思い込みの激しさは決め込みにつながり、迷惑な高齢者になり下がる。
 音楽における十二音技法や絵画におけるオートマティズムなどのように、主題つまりちっぽけな個人の頭から生まれたものに拠るのではなく、もっと大きな無限時間や無為の広がりに託すような制作のしかたもある。
 きょう生徒さんの1人が公共空間にいけばなを展示するにあたって、私のような個人がどれだけ他人の作品に関与できるものなのか、突然畏れのようなものを感じた。いけばなをする彼自身が置かれた緊張感の中で、私ではないもっと大きな何者かからインスピレーションを得て、より彼らしい表現ができるかもしれないのだ。

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