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いけばな随想
diary

消化 240925

2024/9/25

食べ物であれば、匂いを嗅ぎ、唇や舌に触れ、歯で噛んで喉を通り、食道を経て胃に入り、他の内臓からの分泌液の協力も得ながら十二指腸から小腸へ送られ、大腸から肛門へ至るという長く複雑な行程で消化され栄養となる。

スマホを通して入ってくる情報の多くは、噛み砕く必要のないくらい破砕されていたり、胃腸が働く必要のないくらい既に消化されている。それが次々に間断なく入り続けるから、もう選別能力を超えてしまってオーバーフローを起こすのだ。

人の体力や能力は、自力で消化する苦労と引き換えに栄養として吸収された物の結果であることを忘れてはいけない。他人が消化した二次情報は、すでに他人に栄養分が吸収されていて、自分の所へ来た時には食べカスである。カスをいくら噛んでも、ガムほどの値打もない。黴菌がついて変質したり腐りかけていたら、食中毒を起こす。

そんな世の中にあって、いけばなは消化行程に似た経験を積む必要がある。目と知識だけでは会得できない。目で観察し、鼻で香りを嗅ぎ、手で硬さや弾力を確かめて、切ったり曲げたり挿したりして完成する。

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