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いけばな随想
diary

理由 250513

2025/5/13

 久しぶりに観た映画『リンダ リンダ リンダ』に、「きみに会いたいから、ぼくは学校に来ている」というクサい台詞を一生懸命相手に発しているシーンがあって、思わず胸が踊った。私はあの頃、何か理由を持って学校に通っていただろうか。思い当たる節はたくさんある。恋愛がらみの恥ずかしい理由と、行き当たりばったりに出現する楽しいことに出会えそうな予感とである。
 いけばなを続けていられる理由も、どうやらこの「予感」にある気がする。この感覚はジャズを聴くときにも味わうもので、知っている曲なのに意外性が出現する愉しさだ。高校生活はまさに、毎日が同じような繰り返しみたいに思えても必ず新しい明日がやって来た。
 いけばなは同じ花材を何時間もこねくり回すことができないから、次々に新しい顔を持って来なくてはならない。同じ台本でも、いつも俳優陣が異なっているというわけだ。
 何かをやるとき、必ずしも理由があるとは限らない。いけばなをする前に理由がなくても、いけばなをやった後に理由が見つかれば儲けものだ。予感が当たって何かに出会えると、もうやめられない。

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