神秘の綿 251107
2025/11/7
花は神秘的に語る。風船唐綿の風船のような薄緑色の果実の中には、初め固く閉じた組織があって、それがだんだん絹糸のような極細の繊維束に変化する。その銀色に輝く100本を超える繊維それぞれの先には2mmくらいの黒い種。そして表皮が割れる頃には、束がほどけて、1本1本の白い種髪が空気をまとってふわりと飛び立てる軽さを準備する。無重力にほどけて空に舞う。
10年以上も前のこと。私は憧れのカウアイ島で、レンタル・カヌーで河口からジャングルに向かって川を漕ぎ上っていた。1人で漕いでいたから、急に暗くなり土砂降りのスコールに襲われて肝を冷やしたが、30分で雨が弱まると、雲間から日光が幾筋もの線になって背後の彼方の大海に降り注ぎ、そのいくつかの光線はついに私に追い付いて、私の周りで静かに降る雨粒と靄を輝かせた。
カウアイ島から戻ってしばらく後に、風船唐綿の輝く種髪をひたすら集めて、いけばなとして“雲”をつくった。あのカウアイ島の雲だ。神秘の“雲”は、10年の時を経てもまだ私の手元にあり、ハワイの神秘と響き合って、仄暗く光っている。