花のコミュニケーション 250601
2025/6/3
人と人のコミュニケーションに一役買う花がある。誕生日やお見舞いの花。それらは確かにコミュニケーション・ツールの花ではあるが、いけばなではない。いけばなは、その現物を相手に渡してあげることができない。お慶びやお悔やみの言葉と同じで、形を伴わないイメージのコミュニケーションである。
いけばなは、人間同士だけではなく、人と花とのコミュニケーションでもある。いける人は花材を目を細めて隈なく眺め、軽く触ってみたりもする。枝の太さや硬さを確かめ、木や花の香りを嗅いでみる。
知り合いのいけばなの先生は、もうほとんどご自分の庭木と交際しているんじゃないかというくらい、バラやけむりの木に思い入れが強い。
それだけでは済まない。いけばなは、それを見てくれる人を想像する。店にいける時、そこの常連さんを思い浮かべる。いちげんのお客さんも想像するし、店主の顏も思い浮かべる。また、歳時記を確かめることもあるし、その日の天気予報も見たりする。気にし始めると際限がない。自分はいけばなを通して、身の回りの環境をどこまでも広く深く知ることができる。