虚飾の部屋 251223
2025/12/23
日焼けした本を捨てるかどうかと迷い、ひとまず筒井康隆は2度目を読み切った。読み直すと、もう1度は読まないと捨てられない気になるものが多く、5冊ばかり減ったにすぎず、一向に終活は進まない。
学生時代にハードカバー本の多くを買った。立派な本とレコードが私の精一杯の飾りだった。5畳の偏狭な部屋の、近所の酒屋から盗んできたビールケースを並べたベッド脇に、アパートを退居する先輩から受け継いだ本棚やレコード棚があるのだった。本とレコードは読み聴きできるという点で、実益的な装飾物として最強だったと思う。
当時の日本の居宅には重厚な応接室があって、1つの壁面に大きな棚が据えられ、テレビとステレオとウイスキー(かブランデー)が格納されていたものだ。これらもまた、見て聴いて飲むのならば実益的な装飾物と言えただろうが、ステレオとウイスキーの活躍機会が少ない家では、ただ中流市民階級を誇示する装置として虚飾だったといえよう。
しかし、実益を伴う装飾は、装飾の本道から見れば邪道である。いけばなのように、全く実益を伴わない装飾こそが完全だ。