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いけばな随想
diary

複雑と単純 241130

2024/11/30

 いけばなで陥りやすいのは、使われている花材の種類と量の多さそして複雑さが深みを感じさせるという誤解だ。これは、24人ものメンバーが踊りながら歌うグループの方が、必ずしもソロで歌う歌手より優れているとは言えないことと同じだ。
 いけばな作品の複雑さは一種の目くらましとして作用して、見る人はその細部すべてに目配りできない。全体を捕まえて「スゴイね」と言ったり、または自分の好きな花や名前を知っている花の部分だけに注目して「キレイね」と言って終わることすらある。
 建築の「軒反り」のように、空間を区切る屋根の曲線1本は、その滑らかさやセクシーさを感じるような曲線の変化の具合や、また屋根の面積や重量感とのバランスなど、シンプルなだけに周辺空間との関係の中で念入りに見つめられる対象となっている。
 花材も、枝分かれが多く葉の付き方もまとまり感があるアセビなどは、いけてみると形を取りやすい。しかし、サンゴミズキやすうっと伸びた春の梅など枝分かれが少ないシンプルな枝は、長さや角度や曲げ方ひとつでその印象がまるで違うから、扱いが難しい。

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