トライ&エラー 231112
2023/11/13
先日の海でのインスタレーションは、「竹を繋ぐ技術」の点で、かれこれ5~6度目の失敗の機会となりました。
竹にワイヤーを通す穴と竹の節との位置関係、その穴の大きさとワイヤーの太さの関係、繋ぐ2本の竹の距離関係……竹を繋ぐためには、様々な関係を解決する必要があります。ふとした機会に、針金は2つ折りにして2本1組のようにして使うと、時間は半分、強度は2倍になるよと先輩から指摘を受けたりもします。
また、作業の際に使う道具も、普通のペンチがいいかラジオペンチの方が使いやすいか、いやいや、ワイヤーを切るにはやはりニッパーがいるとか、作業手袋は左手の一方だけにはめる方が作業性がいいとか、いろいろなことを試しながら作業を進めていきます。
しかし、海の力にワイヤーは負けました。次回はロープでやってみよう。硬い針金より柔らかいロープの方が波の力を吸収しそうだ。漁師さんも針金使ってないもん……というふうに、トライ&エラーが少しずつ知恵をつけ、見方を変えていきます。
たった5~6回では足りません。無限のトライ&エラーが華道の道です。
非生産的な楽しみ 231111
2023/11/11
文明と文化の関係は、生産と消費の関係だとしたうえで、私自身はもっぱら消費が上手なので「文化人」なのだと決め付けています。
さて、今日は、生産性と非生産性の関係を考えてみました。
友人の会社の名前は「michikusa(道草)」です。「道草を食う」というのは、いらんことして時間を浪費する意味なので、その友人はあまり儲けないと宣言していることになります。
私は小学校低学年の頃、友達と川沿いの道を下校していました。落葉などを川に投げ込んでは、それが水面に出っ張った石などに引っ掛かったら棒切れでつつくという道草を食っていたので、帰宅はいつも遅くなりました。ある日、ピンポン玉を投げ込むと、何にも引っ掛からず、すいすい流れて行きます。それを追っ掛け、自分の家も通り過ぎ、どんどん川筋を下って遠くまで行きました。夜が更けてしまい、友達と一緒に親達に叱られた思い出は、今も勲章みたいに輝いています。
もし、いけばなが生産性の高いものだったら、私はこんなに没頭していないと思います。お金も悪くはないけれど、目的は暮らしを楽しむことにしたいです。
面白がる才能 231110
2023/11/10
長く懇意にしている友人を、何十年ぶりかに再会した知人の店に連れて行きました。知人が調理のため向こうに行った隙に、友人は言いました。
「この店の人、楽しそうに仕事をしているのがわかって、なんか嬉しいわぁ」
「どこを見て、楽しそうって、わかったん?」
「見んでもわかるわー。楽しく仕事してない店に行くと、それはそれでわかるやろぉ?」
「わかるー!」
わかるんですねー。ホント恐い恐い。これは、何事についても言えることで、家庭生活も同じだなーと思い当って反省すること、しきりです。楽しさも苦しさも、伝染します。
花卉農家の仕事ぶりを思い浮かべると、出荷までの長い月日をどんな気持ちで過ごしているのか、他人事ながら気になります。私が花を陰気に扱っていると、いけばなの生徒さんにはたちまちそれが伝わるでしょう。結果的に、花卉農家さんの仕事をも暗いものにしてしまいます。
先日、私の生徒さんが、グロリオーサの蕾と花を見比べて、
「花とガクは、咲くとき後ろに反り返るんですねー、面白~い!」
何でもない毎日の些細な物事を面白がれると、日々幸せ者です。
大抵うまくいかない 231109
2023/11/10
Bar CON ALMA に“はないけ”をする日でした。花店で偶然見かけたシースターファン(シダの仲間)の細かい線がかわいくて、衝動買いしてbarに行きました。カウンターでいつものようにいけて、さあ定位置に置こうとしたとき、シースターファンが繊細過ぎて、barの暗い空間では全く見えない!
私がいける段取りは、花材と花器と空間とを眺めて、頭の中で大雑把なイメージ‹その1›を思い浮かべます。目で観察しながら、また手で触りながら長さや向きなどを花材と相談。花器に挿してみて、イメージ‹その1›には無理があったことを知り、イメージ‹その2›を出す。同じ繰り返しで‹その3›‹その4›……と進み、便宜的に完成としますが、何となく形になってくれたという覚束ない偶然の感じ。
今日のように明らかにうまくいかないときは、ふりだしに戻ります。所詮、人間の頭で考えることには無理があるんです。花材のサイズや性質は標準化されないため、建築やインダストリアルデザインのように設計図を引くこともできません。
目と手で対話しながらの作業は、パッと一瞬で出来上がったりしません。
好きと嫌い 231108
2023/11/10
私はジャズやロックが好きで、特に好きな曲はどんなTPOで聞いても、いつもいつでも聞き惚れます。
私は日本酒とウイスキーも好きですが、昨日美味い! と感じたウイスキーが今日不味いと感じることがあります。少し間を置いて数日後に飲んでみると、やはり不味かったりします。食べ物では焼きそばUFOが昔から好きなのですが、3回に1回は不味いです。飲食物に対する好き嫌いは、なぜか安定を欠いています。
いけばなについては、心に残る他人の作品がいくつかあって、いつ思い出しても良いと思うし、好きだという評価は変わりません。一方、自分の作品は、たいてい至らぬ点を後になって見つけてしまい、良かったはずのものも良くないものになってしまいます。自分の作品に対しては、好き嫌いよりも良し悪しで評価してしまうのかもしれません。
自分と自分の作品が大好きだと言えるようになったら、どんなにか強いだろうと思います。また、良し悪しの評価も、他人に厳しく自分に甘かったら、どんなにか楽だろうと思います。好きでやっているから、どうでもいいことではありますが。