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いけばな随想
diary

風呂屋の花 240624

2024/6/24

庶民の生活の場であり娯楽の場であった大衆浴場が、都会でも田舎町でも減ってきた。大衆浴場には、壁面いっぱいに細かいタイルで方眼紙に描いたような富士山の絵があったり、ペンキでヘタウマ風に描かれた白砂青松の絵があったりした。

そういう場所に、ファインアートは似合わない。アートディレクターの誰かが敢えて風呂屋を展覧会場に見立てた場合には、そこに期待される機能は入浴ではなく展示だから例外。

いけばなも同じで、敢えて風呂屋に展示しろと言われたら、そこにふさわしいいけばなをいけるだろう。風呂屋にいける花と床の間にいける花とは違うという話である。私は18歳の時、世田谷区上野毛の「大良湯」で風呂洗いのアルバイトをずっとしたから、風呂屋コードに合ういけばなもやれるとは思う。

さて、ホテルや飲食店は、昔ながらの大衆浴場とはまた異なった空間だ。空間によっていけばなのスタイルを変えることは、自然なやり方だ。しかし、「芸術家」の取り組み方は、そこまでの機動力(?)を発揮しないことが多い。例外的に、何でも包んでしまうクリストなどもいるけれど。

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