消息 240804
2024/8/5
「消息」魅惑的な言葉だ! 何かが存在したカケラすら消えてしまった彼方、吐いた息の気配も吹き消されたようなどこでもない場所で、はかない残像を探している。そこは、この世とあの世の境で、探している物も実在するのかしないのかわからない。
探されている相手の方も、自分からバイバイと言っておきながら、その裏腹に忘れないで欲しいという非言語のテレパシーを送ってくる。これは、動物的なアピールではなく、植物的で遠慮がちなかすかなメッセージだ。1万倍に薄めたフェロモンのような気配なので、それに気付くのは蝶の触覚くらいである。何もない中空に水蒸気の密度が高まって雲になったとその蝶が思った瞬間、雲になりかかった水蒸気はすぐにほどけて中空に戻っている。
おそらく、そんな世界観は15秒の動画では表せないし、写真であってもスマホの小画面では表せない。
消息を知らせることができるのは花粉であり、また草露であり月光である。草月という流派の名は、オブジェと呼ぶ硬い実在よりも、消息と呼ぶ捉えどころのない気配で表現するいけばなだという表徴ではなかろうか。