空間の性質 240903
2024/9/3
草月のいけばなの構え方は「場にいける」というもの。そして、「場」というのは人それぞれの関わり方があって、一様ではない。同じ場所にいても、そこに3人がいたとすれば、三者三様の異なる空間として認識される。各人の経験や着眼点が異なるからだ。
私は海が好きなので、どんな海にも魅力を感じるけれど、ある浜にだけは近寄っていない。少年時代に弟と貸しボートを漕いでいて、沖に設置された飛び込み用の筏から飛び込んで溺れた同年代の少年を引き上げたものの、彼は死んでしまった。
私は1930年代の上海の雰囲気が好きで、オールドファッションを売りにしたジャズのビッグ・バンドのライブに行った。平均年齢70歳は超えていただろうバンドメンバーたちの演奏はビシッと決まらず緩かったが、朗らかな演奏に客も大喜びで踊った。上海には1800年代から欧米諸国や日本によって租界が置かれた歴史があるだけに……それを思い出すと、ただ陽気に過ごすことはできなくなってしまう。
だから同じような空間でも、また、同じ場でも、楽しい花もいけられるし暗い花もいけられるのだ。