ピアニッシモ 240912
2024/9/12
ケニー・ドリューというジャズ・ピアニストが弾く「Summer Night」が、私の心に沁みる。音をあまり鳴らさず休符とタメで演奏する。それが収録されているアルバム『Dark Beauty』には、「Run Away」や「It Could Happen To You」など強力なリズムと印象的なメロディの曲があって、そういう派手な曲があるとアルバムも売れやすい。
そうなのだ。強弱のアクセントはあらゆる芸術的表現に欠かせないのだけれど、たいていは「弱」が「強」を補強する役回りになりがちで、「弱」を際立たせるための「強」という役回りはほとんど見かけない。
いけばな展に赴き、「静」×「弱」の素晴らしい作品にたまに出会うときがあって、そのときは心が震える。そうなのだ。私の好みは、どちらかといえば心に沁みたり心が震えたりする作品で、心が踊るような作品ではないのかもしれない。
自分一人が自分のためにいける花も、本当は侘びていたり寂びていたりしていたい。ところが、それをSNSのために仕上げるとなると、派手な味付けになるよう調味料を振りかけ過ぎてしまう。心が強くなれない私は、見かけの強さに溺れるのだった。