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いけばな随想
diary

うろうろしたら見えてくる 240922

2024/9/22

山の麓から見上げても、頂上は見えない。途中の森や岩場が視界を遮るからだ。10キロも離れたら、頂上も稜線も見えるというのに。

しかし、とにかく遠ざかればいいというものでもない。富士山を飛行機から見ても、弾丸登山の人たちの国籍や表情までは読み取れない。遠くなればなるほど、人間の五感で感じ取れる境界の外へ出てしまう。

つまり、物事は矛盾に満ちている。山の全体像が見えるということが、「わかった!」という安直な達成感になってしまうと、もう探究心も想像力も失くしてしまう。「知らなかったら良かったのに」ということも、世の中にはたくさんある。謎がない世界、裏がない世界ほど退屈なものはない。見たいものがすぐ見えるのは、不幸なことでもあるのだ。

いけばなに頂上があるとして、考え方は同じかもしれない。理念的にいえば、いけばなばかりに囚われて、奥義に近付こう近付こうとしていたら、逆にいけばなの頂上は見えなくなる。物質的にいえば、いけばなの全体を見ようと後ろに下がったり、花のおしべの1本を見ようと近付いたり、うろうろするのが正しい見方だ。

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