厄除け 241101
2024/11/1
42歳で急性心筋梗塞を患ったとき、両親は私に「ほら、厄除けをせんかったから……」と、ぼそっと言った。私は「これだけ国際化が進んでいる世の中で、イギリス人の誰が厄払いする? アメリカ人の何人が厄除けする?」と悔し紛れの悪態をついた。非科学的な迷信に惑わされたくないという本心だった。
慣習から逃れようとでもいうように、それからも酒と煙草を切らさないでいたら、45歳で再び心筋梗塞に陥った。因果応報、てきめんであるが、まだ酒はやめていない。
さて、いけばなを通じて、植物に触れる機会がとても多くなった。それも影響しているのだろう、最近は超自然的な力に対して頼る気持ちが芽生えかけている。若い頃は何でも自力で打開していく自信に満ちていたが、それはもうしんどい。近頃は自分の手に余ることばかりだ。完全な他力本願の気分ではないにしても、すべてが偶然ではないという、目に見えない意志のようなものを感じてしまうことがある。
冗談めかして言うが、文明に偏り過ぎた文明人は急いでいけばなでもして、半分は未開人であった頃の人間を取り戻すべきである。