脱線 241221
2024/12/22
ガマの油売りという大道芸が近頃ほとんど見られなくて残念だが、「さあさあ、お立ち合い!」から始まって、刀で紙を切り刻みながら「1枚が2枚、2枚が4枚……」と群衆の目を引き、紙吹雪を舞わせて喝采を浴びつつ腕に刀傷を負ったフリをして、ガマ油の軟膏でその傷を治す見世物である。薬を直接アピールするのではなく、薬を売る目的に対して考え得る限り遠回りしているとしか思えない脱線ぶりで、結局売ってしまうスゴ技だ。
高額な保険の営業や車の営業などでも、さりげない会話から客の顔色を見ながら販売行為につなげていくが、ガマの油売りの場合は、しょうもない商品の付加価値としていたものが逆転して本来的な価値となり、芸が商品で薬はオマケという具合である。最近人気の観光列車というのも、乗車券の値段よりも車中での飲食代の方が高かったりして、商品価値を付加価値が追い越してしまうような例は枚挙にいとまがない。
中学校や高校の授業で記憶に残っているのは、たいてい先生の話が脱線していたものだし、いけばな教室も脱線すればいいのかどうか、生徒さんには聞けない。