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いけばな随想
diary

大事と小事 250616

2025/6/16

 修行して、ある境地に達した者は、諸事一貫、大事・小事に関わらず過不足のない平常心で事に当たれるという。
 さて、勝ち目はなくとも、面白いことこの上ないという博打(ばくち)がある。人生で1度きりしかないような博打だ。変な三段論法かもしれないが、小事はだいたい計算できるから、負けることはない。負けることがないものは博打とは呼ばない。負ける確率が高ければ高いほど大博打で、生きているという人生こそが一番の大博打である。
 私は病気と事故で都合4回死にかけたけれど、死んでいない。悪運は強いことが証明された。だから、というわけでもなかろうが、こんなに先が見通せない人生において、毎日毎晩、何を細ごまと小事の計算をしているんだろうと面倒臭くなることがある。
 いけばなと出会ったのは40歳。最初の心筋梗塞が42歳。運命を感じるほどのタイミングではないものの、見えない伏線があったのだろうとは思う。どんな縁が人生に作用するかわからないから、面倒がらずに小事に当たるのがよかろう。今晩もウチの猫を膝で挟んで毛を梳き、花瓶の萎れた花を1本抜く。

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