画龍点睛を欠く 250628
2025/6/28
マニアックになってどうする? という遠くからの声がする。その場所に長く留まっていると、自分の目がだんだん細かい物を見るようになる。メガネから虫メガネの倍率になり、光学顕微鏡から電子顕微鏡に至ったら、もう全体像は何も見えていない。すなわち、見るべきものをすっかり見失っている。
いけばなをしていて、あまりにも細かい所に注意を向け過ぎるのは良くない。肉眼で見える範疇で完成度を追求したいものだ。画龍点睛を欠くというのは、作品を制作する者に対する戒めの言葉であるが、それを神経質に受け止めると、とりとめのない作業に没頭することになる。薄目でシュッと眺めて「完成!」と決め込むくらいが適当である。
いけばなは、生け花であり、活け花である。あまり長く吟味していると、枯れてしまうか腐ってしまう。だから、いけばなをする上で大事なのは、時間をかけてこだわることよりも、「細部にまで油断召されるな」ということだ。
弱った葉の1枚を見逃してしまうこと、不自然に折れた枝を見過ごしてしまうこと、散りかけた花をそのままにしてしまうこと。これが油断だ。