集中と弛緩 250705
2025/7/5
いけばなの生徒さんの甥御が水泳選手である。そして、十分の1秒を縮めようとして力みが出てしまい、大会で1位を獲ることはできても目標タイムを出せないでいるらしい。
昨晩、日本陸上選手権をテレビで見た。100m走は緊張と集中のうちに競技が始まり終わるように見えるが、選手には果たして緊張を緩めるタイミングがあるのだろうか。そして、アスリートが極めようとする1秒は、アーチストにとっては何だろう。
日本画家が襖絵を描いている動画を見た。最初のひと筆を紙の上に置く瞬間、見ている私が息を呑む。ぐっと唾を呑み、顔がスマホ画面にせり出して足指に力が入る。画家本人はサラサラサラと軽やかに筆を運ぶ。幅が30cmもある刷毛に持ち替え、「えっ、そんな!」と声を上げるほどの大胆さと脱力感で、刷毛をスイーッと1m以上も走らせる。
私がいけばなをする時、他人の目があると緊張を緩めることができない。嫌な汗をかきながら力んでいる。玄人という言葉の「玄」、幽玄の「玄」は、私がそこに至りたい境地で、深みはあるのに重さがない感じ。充実していて垢抜けた感じ。