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いけばな随想
diary

家元のロングブーツ

2025/10/4

「いけばなの先生でいらっしゃいますか。季節の花のお名前もよくご存じなんでしょう?」と初対面の奥様。私は花の名前をあまり知らないから、勝手に嫌味だと受け取ってしまったのだが、たぶん相手に悪意はない。私は花の名前を覚えるよりも、花の新しい使い方をしていきたいのだと、そのとき言い訳しておけばよかった。
 かつて、いけばな展の会場で、結婚式場のお下がりの木製の椅子を積み上げて花器に見立て、ソテツの葉などを来場者に自由に挿してもらうインスタレーションを行った。椅子は座るものである。その椅子をひっくり返すと、人を座らせる機能を失い、意味不明のオブジェに変身する。そのオブジェに、花器代わりという新しい意味(機能性)を付与したのだ。
 私は何でもいけばなの土俵から物を見る。だから、形のいいグラスやデキャンタがあると、それはいずれも花器に見える。竹や流木が転がっていると、全部花材に見える。人は自分の立場で見たものに意味付けすることに慣れているから、各流派の家元がロングブーツやパンプスを花瓶に使う新しい見立てには、みんな驚いてしまう。

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