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いけばな随想
diary

好きを広げる 251021

2025/10/21

 夫婦で食事に行くと、昔は「おいしいね」「きれいだね」「サービスが行き届いているね」と、いい点ばかりが目に付いて楽しかった。人生を重ねると好きが増えるかというと、とんでもない。近頃は「火が通っとらん」「このベチャッとした天婦羅は何なん」「このサラダ、キャベツが干からびかけとらい」と文句ばかりで、これはこれで楽しい。
 歳を取ると嫌いなことがはっきりしてきて、好きなこともくっきり明確になる。嫌いなものだらけの大海に、好きなものが孤島のようにぽつねんと浮かんでいる様子ではあるが。それだけに、好きなものは貴重である。
 そういうわけだから、私はいけばなを大々的に普及させたい。いいとこだらけのいけばなを、群島のように広げたい。自分の好きな陸地が広がると、自分にとってとても気持ちがいいはずだ。これは、考えると非常に利己的で、本能的な行為である。人間は歴史的に、自分の居心地のいい領土を拡大するために戦争をしてきた。自分の好きを広げることは、他人に領土争いを仕掛けることである。
 いけばなという上品な印象を武器に、世界征服を企むのだ。

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