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いけばな随想
diary

他有化されないいけばな 251028

2025/10/28

 ドライフラワーやプリザーブドフラワーなど、非生花が世の中に多くなってきた。そのことの良し悪しではなく、生花を中心に扱ういけばなの特徴に関連して、哲学的用語「他有化」に着目したい。
 マルクスの「疎外された労働」というのは、人格から引き剝がされた生産性によって人の労働が評価され、また生産された製品が生産者を離れて購買されて他人の物になるという二面から指摘されている。その意味で、ドライフラワーやプリザーブドフラワーによって製作された作品は、「疎外された労働」による「疎外された商品」である。
 しかし、いけばなは特定の環境(空間と時間の両面)に合わせて制作されたインスタレーションという性格を持っており、その場から引き剥がして別の場所にそのまま移設するということのナンセンスさがあるため、制作者の意図や感性を無視して一人歩きしにくい。
 また、重力に対して微妙な傾きであったり、圧迫力に対して非常に弱かったり、運搬に際して強固に安全に梱包や固定ができないなどの条件も重なり、制作者の目が行き届かない所での「他有化」が困難なのだった。

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