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いけばな随想
diary

花鋏の重さ 260110

2026/1/10

 庭のホトトギスとツワブキの、花が萎れた茎を切る。満開はとうに過ぎているのに、冷たい冬風に揺れて、咲き残った花が灰色がかった曇り空に色を添えている。鋏を持つ手がキンキン冷える。手袋はしないから、鉄の冷たさが直接貼り付いてくるのだ。
 冬場は手のひらの乾燥が激しく、鋏の柄がよく滑る。強く握っておかないと、ちょっとした拍子に抜け落ちる。握力が落ちたことも無視できない。70歳くらいまでは筋力の心配はしたくなかったが、こんな調子では本当の仕事はできない。
 あなたの仕事は何ですか? と聞かれることに、申し訳なさを抱く。い、い、いけばなを教えています……と小さく答える。万一、何で食っていますか? と聞かれたら答えられない。いけばなだけでは食えてない以上、それを生業と言うのは恥ずかしいから。
 日本人が、食うために箸を駆使するように、なんびとたりとも、いけばなのためには鋏を使いこなせなければならない。昔の電車やバスには車掌がいて、改札口の駅員も皆、鋏を持った手でカンカンカカンとリズムを取りながら切符を切っていた。やってみたけれど、乱れる。

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