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いけばな随想
diary

いけばなの見方 240429

2024/5/7

 抽象画を見て「わからない」とつぶやく人が大勢いる。しかし、人間を見て「わからない」と嘆く人はいない。他人なんて所詮わかるわけがないのだという当たり前の諦めがあるから、わからなくったって別に不安ではないし、それを問題にすらしない。なのに、抽象画の前では肩を落として斜めに睨んで「わからない」と言う。
 先日の「日本いけばな芸術展」の会場で、来場者の歩みが速いことが少々残念だった。「わからん」と言うこともなく、作品を一瞥するだけでスースーと行き過ぎるのだ。知人の作品を見つけるとワーワー言っている。それとなく立ち止まってその会話を盗み聞きすると、「このユリ真っ白できれいだわねぇ」とか「このひん曲がった枝は自然なの? 何なの?」とか、花材1つひとつに対して美しい花だ、変わった枝だと見たままを言葉にしているに過ぎない。
 いけばなは、出来上がったいけばなは抽象的だが、名前を持つ具体的な花で制作されていることから、作品全体を見て「わからない」ということを避けて「このバラかわいい」とコメントすることで「わかった」と安心するのである。

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