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いけばな随想
diary

そこにあるリアル 231011

2023/10/11

 この数年、いけばな講習もリモート開催の機会が増えました。私はそれが苦手で、受講するのも気持ちが乗らないし、教えろと言われかねない場面では身を潜めて気配を殺しています。
 肉眼で花を見るときは、自分の体と脳の赴くまま近づいたり離れたり、右から見たり下から見上げたりできます。教える方も習う方も、互いの仕草に対して自由にフォーカスできるし、集中度を高めたり緩めたりしながら声だけ聞いて目を離すことだってできます。
 そして、いけばなは何といっても手仕事なので、枝の硬さと腕の筋肉の関係とか、剣山に大きい枝を挿すときの腰の入れ方とかが重要です。トゲのある木は時に歯向かって手指の皮膚を傷つけてきます。いけばなはそういう身体性に直結した表現なので、配信されたリモート映像は肌で実感できず、ちょっと白けてしまうんです。身体性はそれだけではありません。草木は切ったり折ったりするとかすかに音を立てるし、固有の香りを漂わせて、五感を刺激してきます。
 それに、いけばなは数日で枯れ果てるので、花材と場所との関係も一期一会のライブ感を楽しめます。

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