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いけばな随想
diary

早坂暁『華日記』 240410

2024/4/15

 戦前戦後に日本の華道界が大きく動いたことは、早坂暁の『華日記』に詳しい。1927年に創流された草月流も、その奔流の中心にあった。
 その時期の日本は、表現空間も表現資材も窮乏しており、いけばなをする環境にも制約や障害がたくさんあったことは想像に難くない。そうした困難に直面して、想像力は生まれる。そしておそらく、数知れぬ失敗や失望が、華道家たちの前に立ちはだかったことだろう。気持ちが潰えてしまいそうな、ぎりぎり手前で発揮されるのも想像力である。だから、戦前戦後期は、足りないところでどう表現するか、つくり出す人間の力が試される場だった。
 いま私が置かれている環境は、当時と比べて個人的にも社会的にも恵まれている。足りないものはあっても、無いというものはない。だから、想像や創造よりも、あるものをどう使うかという、使い方や組み合わせ方に流れてしまいがちだ。
 あんなに窮乏していた時代に、なぜあんなに表現欲求を強く持ち続けられたのか? 目の前のご飯を美味しく食べることよりも、心地よい寝床で快眠を貪るよりも。とても真似できないではないか!

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