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いけばな随想
diary

グレン・グールド 240411

2024/4/15

 31歳の絶頂期に“生演奏”活動をやめ、バッハを突き詰めて演奏したピアニストである。彼が、草月流三代目家元の勅使河原宏の監督映画『砂の女』や、夏目漱石の『草枕』に傾倒したことを10年くらい前に知って、私は急いでその2つの作品を買った。
 『砂の女』は、観ることに体力が要求されるので若い時に観るべきだったが、『草枕』は歳を取ってから読む方がしっくりくると感じた。
『草枕』というのは、旅路の途上にあることを示すタイトルで、現代人がそれを分かることは難しい。この本の英訳タイトルは『The Three-Cornered World』で、これも一筋縄では理解できないが、作品中に「四角な世界から常識と名のつく一角を磨滅して、三角のうちに住むのを芸術家と呼んで」という記述があり、訳者がそこからタイトルを導いたのだという。ハリウッド映画のタイトルの邦訳に比べて、センスの良さが光っている。
 ともかく、『砂の女』をつくった映画監督勅使河原宏は草月流の家元で、四角から常識の一角を削って三角にした世界の住人である、ということに合点がいったのは、グレン・グールドのお陰なのであった。

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