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いけばな随想
diary

サイン 240120

2024/1/20

野球の試合でコーチがバッターに出すサインではない。画家が作品に記したり、ファンの差し出す写真集にタレントが書いてあげたりするサインのことだ。私自身、自意識が過剰だった頃は、雅号の「汀州」のサインを無駄に練習したりもした。

いけばな展では、席札と呼ぶ流派・資格・雅号・花材が表記されたカードを付すが、作家のサインは見当たらない。サインというのは、誰かが有難がってくれて初めて価値を持つので、欲しい人がいない作家は自分のサインを練習する価値すらないという、経済の需給関係がここでも成り立っている。

しかし、一方で、アンディ・ウォーホールやキース・ヘリングのように、作家のサインがなくてもそれとわかるような個性的な作品を生み出す作家もいる。日本の歌謡界でも、その声だけで誰が歌っているかすぐに分かる個性的な歌手は多い。

ともかく、今のところ、私のいけばな作品だけでは、それが私の作品だとは誰も気付いてくれないし、仮にわかったとしても、じゃあそれを買ってあげようということにもならない。つくづく、やっかいな道に入り込んだものだと思う。

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