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いけばな随想
diary

ズレ 250330

2025/4/1

 人の感覚にはズレがある。自分は相当に急いで仕事に取り組んでいるのに、相手にしてみれば「何をのんびりしているんだ!」と気がせいて仕方がない。また、自分がいけた花がちょっと派手過ぎたかもしれないと心配しているのに、いけばな仲間から「もっと豪華にしても良かったんじゃない?」と暗に地味過ぎると指摘されもする。
 たとえば着物を着て華展会場に立ってみると、相反するニュアンスで人の反応が表れる。ある人は、着物を着ている姿に対して、経済的余裕があるのねという目で見ている。ある人は、着物の人が会場にいると、それこそ華があっていいと感じてくれている。ある人は、着物の柄や色味に対して粋だねと心から褒めてくれる。しかし、着物自体が贅沢品になってしまって、着物を着る行為に侘び寂びが入り込む余地がまるでないのだろう。いけばなもいけばな展も侘び寂びを表現するものではない、そういう時代の感覚である。
 時間的にも空間的にもどんどん詰めて、密度の高い“充実した”生き方に価値を置く世界になっている。自分よりも重い獲物を担いでは、鳥も飛べまいに。

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