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いけばな随想
diary

ダンディーの振り 240608

2024/6/8

小説家・評論家の故埴谷雄高氏(1907年生まれ)は、かつて次のように質問に答えたそうだ。あなたがほしいもの「暗黒星雲」。あなたの性格の主な特徴「暗さへの偏奇」。座右の銘「そんなものは持たない」。好きな花「ルドンふうの幻の花」。

昔はこんな人がたくさんいて、私が20代でお世話になりながらその元をトンズラした坂本忠士氏(1918年生まれ)も、質問したら似たような答えをくれただろう。世間はこういう人たちに憧れながら、一方では食えない文化人として嫌悪する風潮もあった。

私は政治経済的な社会での成功にこだわりを捨てきれず、文化人的世界から遠のいていった。しかし、一度その退廃的で哀感に満ちて魔法の夜が好きで夢見心地の世界に棲んだ者は、少なからず成功からの逆行傾向を身中に飼っている。

この「成功への諦め」がダンディー最大の要素なのではないかというのが、ここ数日の考えの帰着点だ。私はいけばなそのものが好きだったのか、いけばなを道具として「ルドンふうの幻の花」の宇宙の底で瞬く絢爛の世界を描きたかったのか、或いは何かを諦めたいのか。

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