汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

ピアニッシモ 241223

2024/12/23

 私の薄っぺらな音楽知識でも、フォルテとピアノの弾き分けが十分でなければドラマチックにならないことを知っている。それは、学生時代に演劇サークルに所属して、舞台美術だけをやるはずだったのを騙されて、1度だけ舞台に立った経験が教えてくれたからだ。
 私は新米の大根役者で、大きい声を出さなければ客席の後ろの隅に届かないだろうと考え、どんなセリフでもフォルテかフォルテシモで応援団のように声を張り上げていた。すると、セクシーな先輩が私の肩に手を掛け、「大事なことは密かにささやくものよ」と私の耳に息を吹きかけるように言った。その後、ささやく小声から大声に切り換えたとき以上に、大声でがなり立てていたのが急に小声になったとき、観客は耳をそばだてて聞こうとしてくれることを理解した。
 だからいけばなでも、フォルティッシモからピアニッシモまで表現の幅がある。1つの作品でその幅を表現することは難しいが、いけばな展の会場レイアウトとしては、大作、中作と小作が上手に配置されると、大小、強弱の変化に富んだ音楽的表現に近付けるのではないだろうか。

講師紹介