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いけばな随想
diary

一 240704

2024/7/5

漢数字の一である。習字を習っていた時、先生から時々この「一」を書かされた。その原島呉峰先生は、私が中学3年の時お亡くなりになり、私は習字をやめた。

先生が使う教本は全部、半紙に自筆かつ自分で蛇腹に製本したもので、表紙は厚紙に包装紙を巻いて仕上げていた。段位(と言っても少年段位)を取った時、白木の表紙の教本と、正月用に虎を描いた半切を軸にしてくださった。掛軸は実家に置いてあったはずなのに、見当たらないのが残念でならない。

字を書くのに、いちばん難しいのが自分の名前だった。自分の名前くらいは上手に書きたいという気持ちが強過ぎて、自分が理想とする人物像に自分の名と字とが追いつかないから納得できないのだった。気分が乗らないそんな時、先生は「一」を書かせるのだ。書こうと思えば書けるのが「一」だし、単純過ぎてどう書いてもうまく書けないのも「一」だ。

いけばなにも「単純化の極」というのがあって、「すべてを含む単純化」という難題である。「つまり、最少の要素で最大のものが表現されていなければなりません」とテキストに記されている。

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