汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

仮説と試行 231101

2023/11/2

 いけばなには「折り矯め(おりだめ)」という技術があります。土佐水木などの枝を両手でミシミシと“無理に”曲げて、元の枝ぶりと異なる枝ぶりに変身させる方法です。
 折り過ぎると“骨折したよう”にブランブランと千切れかけて、自立できない枝になってしまいます。どの枝のどの部分をどの向きに矯めるかによって力加減が異なるので、いつも、枝と私の「初めまして」の失敗の関係です。
 その初めての出会いで、これはきっと折れてしまうだろうなと予測して力を入れると、やっぱり折れてしまった! とか、これは180°くらい曲がってくれそうだと思って力を入れると、予想に反して折れてしまった! とか、これを何度も繰り返すうちに、折り矯めができる枝かどうか、触ってみた感じでわかるようになります。木の種類が違っても、大体わかるようになります。
 他人が提示する理論とか、自分の頭で考えた推測とか、“一般的”な常識とか、そういうものが役に立たないのがいけばななのです。自分の仮説と試行の繰り返しによる経験則みが種となって、はじめて身に付いて花開きます。

講師紹介