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いけばな随想
diary

体で覚える 250320

2025/3/20

 人は過去に学んだり体験したことの積み重ねによって物事を素早く判断する力を身に着けるが、その素早さでもってしても間に合わない事態があるから、「頭で覚えるな、体で覚えろ」とよく言われてきた。
 世の中には素早さの何倍も素早く、反射的な対応が求められることがある。少年時にやっていたサッカーの試合でも、常に局面がコロコロ変わるし、チームメイトとの意思疎通も時に俊敏な敵の対応によって崩された。大人になって車を運転しているときなどもそうだ。高速で走っているとき障害物を避けようとする動作は、勘といってもいいくらい直感的な筋肉の動きで行われる。
 このように命に係わる判断力は、やはり頭から出てくるというよりは体から出てくる。頭でデータや経験則を検索する余裕はない。
 そういうことは、瞬発力が要求される場面だけでなく、いけばなでは花材との関係において重要だ。個々に違いはあっても、梅の枝は一般的に曲げやすい。しかし、曲げ方を失敗すると折れる。折れかけていても折れてしまわないというギリギリを攻められるのは、やはり体験の量で体が覚えたからだ。

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