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いけばな随想
diary

侘び寂び 131025

2023/10/25

 茶道の侘び寂びはしっくりくるけれど、憧れる一方で、華道は侘び寂びだけではないという気持ちがあります。華美に傾き過ぎるのは避けたいと思っていますが、結婚式などの祝いの席にはそれにふさわしい華やかさも必要でしょう。華美であれ、侘び寂びであれ、粋(いき)な空間に仕立てたい欲求があります。
 ところが、達観していない私がいけばなをする時、人に驚いたり見入ったりしてほしい余りに、その場所の趣を変えてしまいたくもなるのです。敢えて調和を乱すような衝動に駆られたりもします。そして、それが行き過ぎた場合、奇をてらったようになって空間を台無しにしてしまいます。
 いつか昔、足摺岬でボーッと2時間、海面を渡る風に見入っていた時、瀬戸内海の無人島の浜で、夜通し星空を仰いでいた時、キャンプ場で夜更けまで焚火をして、火の粉を虚ろに追いかけていた時……。侘び寂びは、人に対する意識が薄らいで(消えて)、心が風景に溶け込んでしまう状態になった時に訪れるのではないかという気がします。人目を意識するうちは色気が勝り過ぎて、心がうまく枯れてくれません。

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