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いけばな随想
diary

入れ物 240220

2024/2/29

臭いものに蓋をすると、臭わなくなる。逆に、何も入っていない容器に蓋をすると、何か入っていそうな気配を感じ始める。蓋をしたときには入っていなくても、しばらく(少なくとも数か月)すると、何かが遠いところから入ってきているように思えて、確かめずにはいられない。

私は蓋物が好きで、広義には、外から中が見えない入れ物が好きだ。だから、箱も好きだ。文字としては、箱よりも筐、筺、匣などのほうが、大切なものの入れ物らしい字面をしていて思わせぶりである。中身がわからない、または入っているかどうかもわからない入れ物からは、様々な想像の産物が匂ってくる。

しかし、茶器や花器が入った桐箱などは、いちいち紐をほどいて開けたり、薄紙や布をはぐって器を出したりするのが面倒くさくて、私はほとんど棄ててしまった。中身と外箱が一体的な関係の場合、その箱は機能性が優位に立って、後々に“神様”などが入って来られる余地がないからつまらない。

いけばなでは、花器に花をいけるが、必ずしも入れ物が花器である必要はなく、花をいけたら、どんな入れ物でも花器になる。

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