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いけばな随想
diary

意思の力 240126

2024/1/26

他人の作品を見る場合、作者の動機や意図を理解しようとしたり、描いた(つくった)必然性を想像したりする。制作年代から推測される社会状況にまで関心を持つこともある。美術館の学芸員に至っては、その執拗さから、おそらく作者以上に作者を理解することになる。

作者はどうかといえば、創作の手の働き以上には観念的でない場合が多いのではなかろうか。当初は理念のような塊があったとしても、制作に着手してしまうと、持って生まれた本来の気質による影響や、材料との格闘に費やす労力とかが、理念に立ち返る余裕を奪い、実際的な作業に没頭する中で行為の意味に対する意識を失うのではないだろうか。制作行為そのものが目的化して、作者が持っていた根源的な魂が置き忘れられるのだ。

鑑賞する側に立ってみると、このところのいけばな作品はあまり面白くない。自分の作品を含めて言えることで、制作の動機が浅いために、鑑賞者が制作者の心的体験を追体験できないのである。追体験するほどの中身がない。

持てる意思を作品制作を通して表現するという、エネルギーの源が必要だ。

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