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いけばな随想
diary

問い続けること 231121

2023/11/23

 今日は、何十回目かの「就労支援指導」のレジュメを作っている。刑務所に収容された受刑者が、社会復帰するための事前プログラムだ。これまで、この何十回、私は一度も同じレジュメで講義に臨んだことはない。今、明日の改訂版を用意していたところだ。
 彼らはゼロからの出発ではなく、マイナスからの出発だ。就業は人生における一大事なのに、彼らは社会的に否定された印象をまとって、リスタートを切る。学卒者が希望先に就職するにも、大変な競争を勝ち抜いていかなければならないが、受刑者は、希望先に就業するという自由は大きくないし、就業そのものが危うさのもとに置かれているのだ。
 彼らに比べると、私の境遇はラッキーに満ちている。いけばなは、私にとって今のところ「業」ではないし、それをやることが世間的に否定されてもいない。「いけばなを、もっと受け入れてよ」という欲求はあっても、「私を、もっと受け入れてよ」という彼らの欲求ほどの切実さはない。
 だからこそ、「いけばなをやる意味」について毎日アップデートし続けることで、彼らの切実さに報いたいと思う。

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