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いけばな随想
diary

姿勢を正す 231116

2023/11/16

 お気に入りの床屋さんが高齢のため廃業して看板も下ろし、「どうしても」という客の髪だけ切っている。非営業なのに、そこのオヤジさんも奥さんも人を迎え入れる時は必ず黒と白の決まった服装を身に着け、二人とも背筋がピンと伸びている。空気感に気持ちよい緊張があって居心地がよい。
 そのオヤジさんが怪我をして、当分鋏を持てないとのことで、私は散髪するために床屋を探す。住んでいるエリアを改めて歩き、4軒の候補が挙がった。
 そして一昨日、思い切って第一候補の店のドアを開けた。
 そこのご主人は私より高齢だったが、私より姿勢がよく、あのオヤジさん以上に身だしなみが完璧だ。“髪結いの亭主”としてフランス映画に出そうなくらいダンディだ。身のこなしも隙がなく、贅沢で素敵なショットバーで過ごしているような錯覚に陥った。いけばなの生徒さんに、オーセンティック・バーのオーナーバーテンダーとイタリアンのシェフがいて、この床屋さんとイメージがぴったり重なるのだった。
 教室を開く者として、何より構えが大事だと気付かされ、昨日から少し背筋が伸び始めている。

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