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いけばな随想
diary

巧まざること 240121

2024/1/21

私は長きにわたって、人前で話しをする機会が多かった。しかし、上手くはならない。青年になって、子供の頃より上手くなったかといえば、技巧的になり過ぎて却ってつまらない話しになっていたように思う。30歳代は一番脂が乗っていたけれど、視野が狭く独りよがりが強かったため、成長は小さかった。40代は迷いが生じてノリが悪く、50代は下手な話しに恥も照れもなく学生相手に精出してしゃべった。60代で、話しのネタの仕入れも減り、自分の下り坂を自覚した。

まあ、何十年も話しをし続け、ついに上達しなかったというのは、よく言えばこれこそ達人の域に達したとでもいうような、いい感じのボケっぷりであろう。『老子』に、「大巧は拙なるが如し」という教えもあるくらいだし。

人間の価値観が歴史と共に大いに変わり続けてきたのが事実なら、人間が表現する内容や方法も大いに変わっていいはずである。美醜や善悪が、真反対に入れ替わったりするのだから。

とすれば、自然に振る舞うことを徹底し、巧まざる表現に終始していたら、ほどほど面白いものが出来上がるかもしれない。

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