汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

弘法筆を選ばず 231224

2023/12/24

 これは、「優れた技量の持ち主は道具に左右されない」という意だ。
 逆に、道具のせいにして、実力の半分も出せなかったと不貞腐れる人もいる。最も自分に近くて、自分のせいじゃないと言い訳しやすいのが道具だ。「筆の穂先が揃ってさえいれば」……。
 道具だけでなく、仲間がいたり、取引先があったり、客の事情があったり、家族の病気があったり、台風が来たりする中で仕事をするので、なおさら優れた技量を持っていないと、いつも思い通りにならないことになる。環境を言い訳にするとキリがない。
 達人は違う。穂先が割れた筆を使うとき、それを従わせて上手に扱うというのではなく、その割れた筆に自分を従わせて、またそれ以上に、割れたその筆でしか表現しえない文字を書くのではないか。
「この花材は投入(なげいれ)には向かない」と切り捨てるのではなく、その違和感を創意工夫に転じ、特長として生かせるようになりたい。そして、水のようにはなれないまでも、諸条件や相手の型に合わせて、自分の型を棄てていけるようになることが、「華道」の道(みち)の半ばかもしれない。

講師紹介