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いけばな随想
diary

形而上学 241003

2024/10/3

形而上学という言葉を使わずに長年暮らしてきた。暮らすというのはとても現実的で、現実離れして暮らすことは容易ではない。哲学的生活とか形而上学的生活というのは、時代と共に逆説的な感じが強くなってきて、そんな非経済的・非効率的で非実用的な暮らし方ができるものならしてみなさいと、自民党代議士から言われそうだ。

ヴィジョンというのは、現実に根を張ったままではなかなか描きにくいにも関わらず、幸福について現実的に測定できるのは給与や貯蓄などの経済的な数値だという考えによって、幸福の求め方が硬直化している日本である。このままでは、日本人は脱皮できずに死んでしまう蝉の幼虫みたいになってしまう。

さて、いけばなには花材が必要で、花材は植物でも土や石でも、水でも構わない。じゃあ、見えない空気はどうなんだ? と問われると一瞬困るが、よく考えているうちに困らなくなる。形而上学的いけばなも可能だという考えに至ると、空気などは実体があり過ぎるほどである。

他の諸般の芸術と同様に、いけばなは、目に見える花材と目に見えない思いを材料に使っている。

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