汀州Japanlogo 汀州Japanlogo

いけばな随想
diary

捨てる花 240521

2024/5/28

愛媛県の愛南町深浦漁港は四国有数のかつお水揚漁港で、一本釣りのかつおが冷凍せず活〆された状態で市場の競りに掛けられる。かつおは高知という先入観を覆すべく、このかつおのブランド化が図られた。

その際、権威ある料亭料理人が、そのかつおにお墨付きを与える役割で現地を訪れた。旨味の乗りもちょうど絶頂のタイミングで、彼は包丁の腕を振るったが、固唾をのんで見守っていた漁師や市場の人たちの表情が一様に曇った。料亭料理人が、臭みを極力残さないために血合い部分を大きく捨てたからである。地元の人たちは、魚一尾を徹底的に残さず使う。もったいないことをしない。

それぞれの流儀が、ぶつかってしまったのである。その後、市場併設の食堂では、ブランド化された“愛南びやびやかつお”のメニューは大人気で、それは洗練ではなく、地元らしさを売りにしている。

いけばなの花の使い方は、料亭料理人に近い。時には、生かす花よりも捨てる花の方が多い。私は、覚悟が足りないから、一度捨てた花を拾ってグラスや深皿にあしらう。残った花を全部使って、自宅の花器に詰め込む。

講師紹介